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セレン:その役割と健康への影響について深掘り

栄養学

セレン、これは我々の生活に非常に重要なミネラルの一つであり、体の健康維持に欠かせない存在です。しかし、このセレンについて、具体的にどんな役割を果たし、どのように摂取すれば良いのか説明してみたいと思います。ミネラルの世界に一緒に足を踏み入れてみましょう!

セレン地域の土壌によって不足することがある

「セレニウム(セレン)」は、体に必要なミネラルの一つです。しかし、体がこれらを吸収する能力はそれぞれ異なります。セレニウムは吸収率が高いミネラルです。つまり、私たちが食事を通じてセレニウムを摂取すれば、体はそれをうまく吸収し、不足することは少ないミネラルです。

しかし、一部の地域では、特定の理由でセレニウムが不足することがあります。例えば、中国北部やシベリア、アメリカ南西部などの地域では、土壌の影響でセレニウムが不足します。これは、これらの地域の土壌がセレニウムを含んでいないか、または含有量が少ないためです。その結果、この地域で育つ食物にもセレニウムが含まれていないか、含有量が少なくなります。それがその地域の人々の食生活に影響を与え、結果としてセレニウムが不足することがあるわけです。

セレニウムと甲状腺ホルモン

セレニウムは甲状腺の機能に大きな影響を与えます。

甲状腺ホルモンという言葉が出てきましたね。これには「T4(サイロキシン)」と「T3(トリヨードサイロニン)」の2つの種類があります。これらは体の様々な機能を調整する重要な役割を持っています。

例えば、

これらのホルモンは体の「エネルギー代謝」を調節します。エネルギー代謝とは、食べ物から得たエネルギーをどのように体が利用するかを決定するプロセスのことです。したがって、甲状腺ホルモンがうまく働いていると、私たちは活動的でエネルギッシュに感じます。

T4とT3これら2つのホルモンは、その「活動性」、つまり働き方に違いがあります。T3の方がT4よりもはるかに活発に働きます。実際には、体内に存在するのはほとんどがT4なのですが、T4自体はあまり活動性がありません。でも心配することはありません。必要に応じて、体内でT4がT3に変換され、本来の活動を開始します。

この変換が重要なのです。なぜなら、T4がT3に変換されないと、甲状腺ホルモンが果たす役割、例えばエネルギーの生成やタンパク質の作成、酸素の使用効率の向上などが進行しないからです。

そして、T4をT3に変換する過程で「ヨードチロニン脱ヨウ素酵素」という特定の酵素が必要になります。この酵素の働きには「セレニウム」というミネラルが必要となるのです。ですから、セレニウムは甲状腺ホルモンが正常に働くために重要な要素となるわけです。

もしセレニウムが不足し甲状腺の機能が低下すると

  1. 疲れやすさ: 甲状腺ホルモンはエネルギー代謝に関与しています。セレニウムが不足すると、甲状腺ホルモンの生産が低下し、エネルギーの生成がうまく行かないため、体全体が疲れやすくなります。
  2. 体重の増加: エネルギー代謝がうまく行かないと、食べたものがエネルギーとして使われずに蓄積され、体重が増える可能性があります。
  3. 髪や皮膚の変化: 甲状腺ホルモンの不足は髪の成長や皮膚の健康にも影響します。髪が薄くなったり、皮膚が乾燥したりすることがあります。
  4. 気分の変動: 甲状腺ホルモンのバランスが崩れると、気分の変動が起こることもあります。イライラしたり、うつ病のような症状を感じることがあります。

これらの症状は甲状腺ホルモンが不足することによるもので、セレニウムが不足すると甲状腺ホルモンの変換がうまく行かないために現れる可能性があります。

セレンとグルタチオン

「グルタチオン・ペルオキシダーゼ」という名前の酵素は、私たちの体内で非常に重要な役割を果たします。この酵素は「抗酸化酵素」と呼ばれ、体の中で発生する有害な酸化物質を無害化する役割を果たします。これには「セレニウム」が必要で、セレニウムはこの酵素を作るための材料になるのです。

この抗酸化作用が、癌の予防につながると考えられています。なぜなら、体内の過剰な酸化物質は細胞のDNAを損傷させ、癌の原因になり得るからです。そのため、グルタチオン・ペルオキシダーゼの働きを助けるセレニウムは、癌予防にとても重要とされています。

さらに、食物から摂取するセレニウムの量は、その食物が育った土壌の種類によって変わります。そのため、セレニウムを多く含む食物を食べる地域とそうでない地域では、癌の発生率が異なる可能性があります。これについては、疫学調査(病気の発生パターンを調査する学問)によって調べられています。

さらに、セレニウムを含むサプリメントが癌の予防に役立つと示す研究結果や、免疫力を強化したり精子の質を高めるといった報告もあります。これらの情報からも、セレニウムが健康維持にとても重要であることがわかります。

セレンの摂取量と過剰摂取の危険性

セレニウムは必要なミネラルですが、過剰に摂取すると体に悪影響を及ぼす可能性があります。長期間にわたって大量のセレニウムを摂取すると、髪の毛が抜ける、胃や腸に問題が生じる、神経系に障害を引き起こすなどの健康問題が発生することがあります。さらに、一度に大量のセレニウムを摂取すると、心筋梗塞(心臓の血管が詰まる病気)や腎不全(腎臓が正常に働かなくなる病気)を引き起こす可能性もあります。

日本の厚生労働省は、一日のセレニウムの推奨摂取量を約30マイクログラムとしています。しかし、日本人の平均的な食事からは一日に約100マイクログラムのセレニウムが摂取できるとされています。つまり、日本人の多くは食事だけで十分なセレニウムを摂取していると考えられます。そのため、特別にサプリメントでセレニウムを追加摂取する必要はないと思われます。

さらに、セレニウムは多くのマルチビタミン・ミネラル製品にも含まれています。食事においては、鰹節、ニンニク、レバーなどにセレニウムが多く含まれています。これらの食品をバランス良く摂ることで、適切な量のセレニウムを摂取することが可能です。

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